なりきり冒険日誌~動き出した時間(3)
この恐怖、カルサドラ発!
……乗り込んでいった先にいた魔物の頭目は、なんとも力の抜けるキャッチフレーズと共に襲い掛かってきた。
黒い翼、第三の目。鋭い鉤爪。確かに恐ろしげな容貌だが、この魔物には見覚えがある。確か魔法の迷宮であいまみえたジャミラスという種族の魔鳥だ。後で知ったところによると、彼はそのジャミラスの子孫筋にあたる魔物らしい。
皇国のカタキと勇んでやってきたダオ皇子だが、どうやら当てが外れたようだ。
それはそれとして、彼らがドルワームを襲おうとしていることは事実。戦いは避けられない。
3体のしもべと共に襲い掛かってくる魔鳥の頭目。前衛だけで進軍を防ぎきることはかなわず、乱戦模様とった。
頭目の統率力のなせるわざか、配下の魔物たちも地上で見る連中とは比べ物にならないタフさを誇る。私は援護魔法を飛ばし終えると、ギガスラッシュの連発で手下たちを巻き込みつつ、攻撃を続けた。
やがて一匹、二匹と倒れていき、最後に残った頭目に攻撃を集中する。こうなればもはや万に一つの負けもない。何事もなく戦いは終わった。
なお、今回雇った盗賊は非常に仕事熱心だったらしく、あの乱戦のさなか、実に五つもの宝を盗み取っていた。
4匹しかいない魔物からどうやって五つも盗んだのか。職人芸の極みと言えよう。
さて……
ドルワームの危機は去ったが、仇敵が既に歴史の闇に消えていたことを悟ったダオ皇子は目的を失い、ふさぎ込んでしまったようだ。
自らを取り巻く環境も感情も、過ぎ去った歴史の果てに置き去りに来てしまった皇子。
彼をいたわるチリの様子は、まるで弟を思う姉のようである。
どうせならば、コスプレ仲間や研究仲間にでも引き込んでやれば現代に生きがいを見いだせるかもしれないと思うのだが、さすがにそれは時期尚早ということなのだろう。
ここまで付き合った義理もある。私ももう少し彼を見守るとしよう。