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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2023-09-17 14:50:34.0 テーマ:その他

天星郷の戦い(5)~なりきり冒険日誌【注:ver6.3までのストーリー記述有】

 治癒呪文の詠唱が讃美歌と混ざり合い、質素な飾り布を彩る。
 救急病棟と化したフォーリオンの礼拝堂。焦る気持ちを抑え、回復に専念する我々の元に一つの報せが届いた。

「"エックスさん"が剣の修理を終え、神殿に向かったそうだ」
「英雄殿、か」

 朗報と言えた。考え得る最大の戦力が復帰したのだから。
 だが。私は小さく唸った。
 現代の英雄。解放者、大魔王。様々な異名を持つその人物の、最も有名な肩書は"勇者の盟友"だ。
 そして待ち受ける悪神の名は……
 プクリポの術師がフムと顎を撫でた。

「初代盟友と現代の盟友、ですか。……どんな会話をするんでしょうね」
「さて、ね」

 あの呪いに一度でも触れた者なら、その呪念を通して彼の過去を知ったはずだ。盟友レオーネの報われぬ人生、非業の死を。
 道具使いが手を後頭部に回して毒づいた。

「だいたい、あの巫女サンが全ての元凶じゃねえか」
「巫女ダフィア、ですか」

 エルフの剣士が腕を組んだ。  ダフィア。かつて双子の勇者を助けた癒し手であり、のちにアシュレイ王の王妃となった女。そしてアシュレイ王に血と粛清の道を歩ませた影の女傑。
 だがレオーネの記憶は、そのもう一つの姿を告げていた。
 裏切りの使徒。
 大魔王の仕業と偽り、勇者レオーネを石へと変えた背信の巫女。
 野心を持つ彼女にとって、傀儡の王として担ぐには、思慮深いレオーネより豪放磊落なアシュレイの方が適任だった。ただそれだけの理由で彼女は長年の友に、生死を共にした仲間に呪いをかけ、石へと変えたのだ。
 それが、あらゆる悲劇の引き金となった……

「と、いうことになってるようだが」

 私は鼻を鳴らした。エルフの剣士は首を傾げた。

「何か気になる点でも?」
「信じるのか?」

 私は問い返した。

「私はウェディだからな。リナーシェ様のこと、根に持つぞ」

 私は寝転がり、天井を見上げた。
 巫女ダフィアの所業は、レオーネ自身が目の当たりにしたものではない。レオーネが火刑台に上げられた時、彼に語り掛けた天使がそう告げたのだ。
 そしてその瞳には赤い水晶が輝いていた。  我々はまだ、敵が何者なのかすら知らないが……敵はわざと英雄たちに絶望を与え、悪神へと変えることで世界に害をなしている。その為に天使さえも洗脳し、手駒へと加えているのだ。リナーシェ様を悪神へと導いた天使アルビデのように。

「リナーシェ様はわざと真実から遠ざけられていた。確実に悪神に堕ちるようにな」

 ご丁寧に、彼らは地上人の私がリナーシェ様に近づくことすら拒絶していた。万が一にも真実に触れられては困るからだ。

「……そんな奴等がレオーネにだけ真実を告げると、どうして信じられる?」

 プクリポの術師がフム、と扇を口に当て、やがて苦笑した。

「まあ、歴史が語る王妃ダフィアの苛烈なやり口を考えれば、やりかねないとも思いますがねえ」
「……それは認めるが」

 肩をすくめ、私も苦笑した。

「だが、確実に言えるのは、敵は別段……人類は醜いから滅ぼすべき、などと考えているわけじゃあないということだ」
 
 私は起き上がり、全員に聞こえるように言った。

「英雄を悪神に堕とすという目的が先にあって、その為に人類の醜い部分を突きつけて利用しているにすぎん。そんな連中が何を言おうと所詮は詭弁。虚仮の妄言だ」

 私はきっぱりと断言した。半分は本音。半分は、こうでも言わなければ戦いに疑問を持つ者が出かねないからだ。
 レオーネの見せた記憶はそれほど凄惨極まりないものだった。

「まー理屈はともかく」

 と、リルリラが気楽な口調で言った。

「滅ぼされるのはヤだもんねえ」

 フッと空気が和らいだ。それだけは紛れもなく真実だ。
 道具使いが照射装置を手入れしながら肩をすくめた。

「あいつの歪み切った性根もプラズマでどうにか直せねえかな」
「頭叩いたら直ったりして!」

 リルリラがステッキを掲げて便乗する。だから直に当てるんじゃあない! 私は頭をさすりながらぼやく。
 天使達はそんな地上人のやりとりを、不思議なものを見る目で眺めていた。
 絶望に抗わんと、あえて笑みを浮かべる者達を。
 礼拝堂にあえかな光が注ぎ込む。女神ルティアナを讃える歌が静かに響いてた。

 *

 最低限の戦力が回復し、再出撃の目途が整った頃、天使の都に奇妙な風が吹いた。
 生暖かく、それでいて切りつけるように鋭い。空気は頭を押さえつけるように重く、頭痛を訴える者すらあった。
 我々は慌てて宿舎を飛び出す。異様な光景がそこに待ち受けていた。

「空を……!」

 誰かが叫んだ。そして絶句した。
 そこには唐突に銀河の海が広がり、そして夜よりも暗い虚空には、天をも見下ろす巨大な船が浮かんでいた。
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