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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2023-10-22 23:47:07.0 テーマ:その他

堕天の星と砂のドラゴン(14)【なりきり冒険日誌※ver6.3までのストーリー記述あり】

 薄桃色の照明が妖しく輝く。高級スイーツの心地よい香りがテーブルを満たす喫茶、バズスイーツカフェ。
 店舗の最奥に設置されたVIPルームは、予約客と店員以外、立ち入り禁止。密談の会場としては妥当と言えた。
 少なくともこのアラモンドの中では。
 ドアの外にいくつもの気配を感じながら私はテーブル席に座っていた。
 今日の客は私とリルリラ、そしてもう一人……。
 主のない席を睨む。代役のバズズ人形がボタンの瞳を輝かせていた。
 ほどなくして、空席の主が店員のピコを伴って現れた。ドアの向こうで聞き耳を立てていたプクリポ達が退散する。
 皿の上からは甘い香り。
 片翼の天使長……流星の帝王ミトラーは、どこか落ち着かない表情のまま笑みを浮かべた。

「やあ、久しぶり……いや、さっきぶりかな」
「ご無沙汰しております」

 私は丁寧に一礼した。ピコは手慣れた仕草でテーブルに皿を並べる。
 甘い空気が、冷たく張り詰めた。
 私の顔には疑念と緊張。そして天使長は……

 ……テーブルの上に並ぶスイーツと自分の体を交互に見つめ、奇妙なまでに神妙な表情を浮かべていた。
 そしてピコの耳元……プクリポの場合、頭の上の方である……に口を当てて、小声で囁いた。

「このくらいの量なら……もう大丈夫かな」
「全然! ミト様、気にしすぎー!」

 私は首を傾げた。天使は気にするなというように手を振った。

「まずは再会を祝して乾杯といこうか」

 ドリンクを手にした天使長はしかし、そこでハタと硬直する。視線はやはり、テーブルと自分の体を行き来する。特に腹のあたりをチラチラと……
 何かあるのだろうか? 私はつられてそちらに目を向けた。
 天使長の体が明らかな緊張にこわばった。
 ……と、突然、リルリラの肘鉄砲が私の脇腹を襲う。
 痛みを訴えるより早く、彼女は天使に向けて笑顔を振りまいていた。

「ミトラー様も、お翼以外はお変わりなくって何よりです!」
「そ、そうか?」

 天使長はミラーグラスの上からでもわかるほどあからさまに、ほっとした表情を見せた。
 首を傾げる私の脇をまたもリルリラの肘が襲った。……何だというのか。

「だからミト様、気にしすぎって言ったのにー」

 ピコが馴れ馴れしく天使長の手を引いた。

「すまないが、説明を……」

 私が白旗を上げると、リルリラは呆れたような顔になり、天使長はバツの悪い表情を浮かべた。ピコが一人、笑い続ける。
「実はここに来たばっかりの頃、ミト様チョー落ち込んでてさー。スイーツだけが生き甲斐だったんだって!」
「はあ……」

 どうも要領を得ない。ピコは続ける。

「けどホラ……スイーツって食べ過ぎると……」

 軽く腹を撫でる。リルリラは皿の上のクッキーを見つめ、ムムと唸った。天使長はコホンと咳払いする。

「だから! それを取り戻すために必死でダイエットをだな!」
「ダイエット?」

 私はオウム返しに応えた。天使長は口ごもりつつ頷く。

「つまり……走ったり、飛んだり……ぶつかったり」
「ぶつかったり!?」

 私の脳裏に、あのサバイバルレース……岩盤が砕け、砂礫が飛び散る光景が蘇った。
 流星の帝王。アラモンスイーツ。そして砂のドラゴン。
 ……整理しよう。つまり?

 ジア・クトとの戦いで翼を失い、地上に落ち延びた天使長はアラモンドへと流れ着き……
 そこでならず者どもを返り討ちにしている内に暗黒街のボスとまで呼ばれるようになった。が、しかし……
 そこで? スイーツを食べ過ぎて?

「ン……我々は元来、食事に無頓着な性質……つまり、食べ過ぎると太るという感覚がなくてだな……」
「それで、ダイエットのためにバイクで荒野を……」

 私は思い出していた。砂の竜がたびたび見せつけた、身を削るような強引なコーナリング。『身を削る』ような。

「つまり、大砂塵の正体は……」

 天使長ミトラーが、ミラーグラスの陰でさらに目を逸らすのがわかった。
 ピコが必死で笑いを抑える。
 アラモンド民が妙に砂嵐の話題を避けていた理由は、これか……。
 全身からヘナトスじみて力が抜けていく。どうやら天使を束ねる長ともなると、ダイエット一つとってもスケールが違うようだ。

「……あー……」

 咳ばらいを一つ。

「周辺の旅人に迷惑なので、出来るだけ……」
「ム、慎む」

 天使長は素直に頷いた。
 とりあえずこれで砂嵐問題は片付いた。スイーツ侍には喜んでもらえるだろう。が、しかし!

「そろそろ……本題に入りましょう」

 疲労感を振り払い、私は人払いを頼んだ。
 ピコが頭を下げ、退出する。
 しばしの沈黙。
 器の上で『流れ星の帝王』がシュワシュワと泡音を立てていた。
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