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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2023-10-22 23:47:58.0 テーマ:その他

堕天の星と砂のドラゴン(17)【なりきり冒険日誌※ver6.3までのストーリー記述あり】

 ひとしきり笑い終わると、天使は再び表情を隠し、私に質問した。

「天星郷には、もう報告したのか?」
「チョッピ荒野で天使長らしき女性を目撃した、とだけ」
「ふむ……」

 彼女は思案顔で腕を組んだ。

「それだけ情報があれば、ユーライザは動くな」

 そして立ち上がる。

「呼びたてておいて悪いが失礼するよ。食後の運動をしておきたいんだ」  彼女はバズズを席に戻すと、ドアを開けた。
 聞き耳を立てていたプクリポ達が再び散っていく。
 遠ざかっていく片翼を見送り、今度は私は腕を組んだ。

「励ますにしても、強引だったかな……」
「んー……ちょっとは元気になってくれたと思うけど……」

 片翼の背中がドアの向こうに揺れる。
 強引に起こした炎は、火種が尽きればすぐに燃え尽きる。我々が冗談や正論をまくしたてたぐらいで簡単に解決する問題ではないのだろう。
 ……と、その視線を遮る様に姿を現したのは、モヒカンのプクリポだった。
 ドアの外で盗み聞きをしていた一人だ。

「よ、よう……」

 彼はおずおずと部屋の中に入り、椅子の背に手をかける。 「アンタら、帝王の昔の仲間で……連れ戻しに来た、って感じなのか?」
「まあ、そんな所だ」
「ふーん……」

 プクリポは斜めに傾いた体のままで我々を見上げた。

「難しいことはわかんねえけど……多分、アンタは正しいこと言ってたんだろうな」

 プクリポのキツネ目がさらに細く、挑むように絞り込まれた。

「……けど正しいだけで世の中上手くいくなら、こんな街は存在しねえんだ」

 モヒカンは反動をつけて椅子から離れた。バズズ人形が頷くように揺れた。

「俺らは帝王が好きだし、帝王も俺らのこと気に入ってくれてる。そういうの……ダメかな」
「……わかるよ」

 堕ちた街、アラモンドは沈んでいくものを咎めるでもなく、蔑むでもなく、ただ受け入れる。隣り合ってしゃがみ込む。事情は知らずとも痛みを抱えた者同士、奇妙な人の輪があった。
 この街は、彼女が羽を休めるにはちょうどいいらしい。

「ねえ」

 と、リルリラは言った。

「しばらく、そっとしておいた方がいいんじゃない?」

 ううむ、と私は唸った。確かに無理押しできる状況ではないが……

「ミラージュ」

 と、エルフは再び私を見上げ、自分の脇腹をちょいとつまんだ。

「ダイエットって、なんのためにやると思う?」
「は?」

 場違いな台詞に首を傾げる。

「そりゃ、健康とか、美容とか……」

 そこで私はハタと気づいた。
 本当に誰にも会わず、引きこもったまま滅びを迎えるつもりなら、容姿も健康も気にする必要などない。

「つまり……」
「うん」

 リルリラは頷いた。

「誰かが迎えに来ること、わかってたんだと思う」

 エルフは静かに目を閉じた。
 翼は廊下の奥へと消えていった。
 私は頭をかく。

「なるほど、な……」

 ミトラーの中でとっくに結論は出ていたのだろう。だが理屈ではわかっていても、心と体がついていかないことは多い。
 それを解決するのは、結局は時間なのだ。

「つまり……我々は勇み足だった、か」

 肩を落とす。エルフはクスっと笑った

「先触れってことでいいんじゃない?」

 英雄到来の先触れ。
 眠れる天使を呼び起こすまでいかなくとも、目覚めの時を告げるくらいなら私にも務まる。

「明日の夜明けを告げる鐘……とでも言っておけば、格好はつくか」
「要するに、目覚ましのベル!」
「ン……意味は同じだが、なんか格好がつかんな……」

 私はようやく笑みを浮かべた。

「なら、後は任せるとしよう」  翌日。我々はメンメとデコリー、プクリポ達と、ついでにスイーツ侍に礼を言い、アラモンドを発った。
 入れ違いで到着した英雄殿が、天使長とどんな言葉を交わしたのかは知らない。
 まだまだひと騒動、ふた騒動あったと聞く。
 それもまた、必要な時間だったのだろう。

 一方の我々は他の冒険者と合流して残る三つの流星を追った。これは天使長が力を取り戻す助けとなった。
 砂嵐も収まった。これも一応、我々の功績ということにしてしまおうか。
 それから、もう一つ。
 意外な成果があった。それは……

「プロのカスタム術、学ばせてもらったよ!」

 メンメとデコリーの仕事ぶりに感激したストリートキッズのプポルが、本格的に技術者としての道を歩み始めたのだ。
「一度は諦めた道だけど……今度こそアタシは羽ばたくんだ!」

 ストリートの仲間達が、その背中を押したことは言うまでもない。
 私は空を見上げた。
 陽炎の彼方に、天星郷の影がかすかに見える。

「今度こそ、か」

 そして王都に新たなカスタム屋が開店した頃。
 天使長復活の報が、私の元に届いた。
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