風にたなびく深紅のマント。
妖しく揺れる羽根飾り。
目元を隠すはハンターハット。
その姿、優美にして豪奢。
これぞ冥府を統べる王者の装束。人呼んで冥界の王装……!
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「というわけで先日発売された"冥界の王装"をメインに据えて新しい衣装を作ってみたぞ猫よ!」
「派手派手だニャ」
「私もそう思う」
私は猫に頷いた。
頭にハンターハット、腕はスーツと馴染むマジェスタグローブ。
脚のクリムゾングリーブで重厚感とゴージャスさ補強し、色変えできない肩の羽根飾りに合わせて同じ色のスカーフも巻いてみた。
目元が隠れて印象が薄くならないよう、口元には薄く紅も引いてある。
そこそこ上手くできたつもりではあるのだが……
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「魔王か何かでないと許されないレベルの派手っぷりだニャ……」
「何しろ元が冥王の装束だからな」
この衣装で日常生活を送る度胸は私にはない。
どう考えても普段使いには向かない。"晴れの日"のための衣装になってしまった。
「いつ晴れるのニャ?」
「それは誰にもわからん……」
そしてこの装備。実はある重大な欠点がある。
それは……
「それは?」
「それは……こんな風に棒立ちになると、急に間の抜けた印象になってしまうことだ!」
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衣装が豪華であれば豪華であるほど、それに見合った立ち姿も求められるものだ。特に我々ウェディは手足が長いため、棒立ちになるとそれが悪目立ちしてしまう傾向がある。
つまりこの衣装を着る者には、常に決めポーズを取り続けるぐらいの覚悟が求められるのだ。四六時中。病める時も、健やかなるときも、寝ても覚めても!
時にはポーズのネタが尽きてスランプに陥ったかもしれない。ポーズを考えるのに気を取られて、うっかり敵の侵入を許してしまったこともあるかもしれない。
それでも冥王に棒立ちは許されないのだ。
「冥王も苦労していたのだな……」
「偉い人には偉い人の苦労があるんだニャー」
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夜長の季節。冷たく風吹くジュレットの白亜街。
瞬く星に紛れて、背後に凄まじい怒気を感じたような気もしたが……
たぶん、気のせいだろう。