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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2024-05-08 23:50:16.0 2024-05-09 10:33:25.0テーマ:その他

天使が大地を歩くなら(7)【なりきり冒険日誌※ver6.5までのストーリー記述あり】

 さて、プクランドでもカンティスのもう一つの任務、技師探しは続く。
 今回白羽の矢が立ったのはメギストリス王国の主任研究員、パルミオ博士。
 かつて独力で飛行装置を開発し、神都の高度まで到達した実績は天界でも高く評価されていた。

「……まあ、天使兵が撃ち落したわけだが……」

 カンティスの顔は、カオスベリーを噛み潰したように苦りきっていた。
 無理もない。博士を咎人として撃ち落した天使が、今度はその技術をアテにして訪問してきたのだから。どの面を下げて、と言われても仕方ない。

「そういう時は、これを」

 と、私はそっと菓子折りを包み、カンティスに持たせた。
 天使は世にも複雑な表情でそれを凝視した。

 街の中心から外れ、郊外へ。住宅街や農業区からも遠ざかり、街を取り囲む城壁の付近まで歩くと、そこに小さな井戸がある。
 カンティスは困惑した表情で首を傾げたが、私は構わず案内を続けた。

「こちらです」

 私は井戸の中に飛び込んだ。唖然としたカンティスの顔が目に浮かぶようだが、からかったつもりはない。
 井戸の奥、洞窟状に広がった空洞の中に石造りの住居がある。
 これがメギストリス主任研究員、パルミオ博士の家。

「さあ」

 私が促すと、カンティスは菓子折りを片手に、マヌーサとメダパニを何重にも重ね掛けしたような顔のままドアを叩くのだった。

 *

 幸い、パルミオ博士は些細なことは気にしない好人物であり、説明を聞くや否や、菓子折りを放り出して巨大船復活という話に飛びついた。
「いやぁ、奇遇ですねえ。実は息子が成長したら家族三人で宇宙旅行に行きたいと思ってまして」
「は?」

 カンティスは目を丸くした。技術者は早口でまくし立てる。

「宇宙船の建造プランは既にあるんですよ。国家予算の数倍の資金と人員が必要になりますが。今回の件は、そのための予行演習としても役立ちそうです。うーん忙しくなりそうだ!」

 博士はメモ用紙に複雑怪奇な文字を刻み始める。机の上に無造作に置かれた掌大の機械の上で、無数の数字が立体映像として浮き上がり、所狭しと躍っていた。
 にこやかな顔でお茶を差し出すのはペコリア夫人。ベッドの上でそれを楽しげに眺めているのが生後数か月のプクラス坊やだ。
 奥の部屋では謎の物体が水槽の中で不気味な泡音を立てている。なんと魔瘴石である。さすがに驚いたカンティスがこれを咎めたが、博士は一切動じなかった。

「魔瘴は未知の成分! 我々が思ってるよりもっと恐ろしいモノである可能性もありますし! 逆に何かに利用できる可能性もあるのです!」
「パパ」

 と、可愛らしい声が響いた。振り返ると、ベッドの上のプクラス坊やである。  何かおねだりでも始まるのだろうか。頬を緩めて親子のやりとりに期待した我々は、あんぐりと口を開くことになる。

「さっきのお話だとジア・クトは宇宙から来たんだよね。それなら、ジャゴヌバが作った魔瘴も宇宙から来た物質だね」

 赤子のようなプクラスが、流暢に見解を述べた。カンティスが唖然とする。パルミオ博士は駆け寄り息子を抱き上げた。

「……なるほど、つまり魔瘴研究は宇宙進出に繋がるカギとなる! さすが私の息子! いやったぁああああ!新発見だぁ!!」

 ペコリアが寄り添って微笑む。笑顔に包まれた幸せな家族である。
 ……カンティス焦点の定まらない目のまま私に近寄り、耳打ちした。

「あ、あれも赤ん坊に見えて14~5歳だったりするのか?」
「正真正銘、生後数か月です」

 メダパニのおかわりだ。天使は頭を抱えてしまった。

「ああっ! そういえば!」

 と、パルミオ博士が振り返る。

「バドリーにはジア・クトに汚染されて鉱物化した土地があるんでしたよね! 採取して成分を抽出すれば解明に近づけるかも……いやぁ! 本当に忙しくなるぞ~~!」

 ……ともあれ。
 カンティスはまたも一名、優秀な科学者を確保することに成功した。寿ぐべきであろう。
 私は一口サイズのアクロバットケーキを購入し、カンティスに進呈するのだった。

「ミラージュよ」

 オルフェアの小高い丘の上。ビターな味付けのケーキを頬張りながらカンティスは言った。

「プクリポ族とは一般的に、ああいうものなのか?」

 彼の手にした手帳には、几帳面な字で細かくメモが刻まれていた。
 二面性。井戸の家。宇宙旅行に魔瘴研究。議論する赤子。それから……無職の力。

「私の知る限り、プクリポにスタンダードは存在しません」
「………」

 あきらめの笑みが天使の顔に浮かんだ。
 彼はアクロバットケーキを無言で飲み込んだ。
 プクランドのなだらかな大地は緑に包まれ、街道沿いには色とりどりのスライムタワーがグラグラと揺れていた。
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