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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

ライブカメラ画像

2D動画 静止画
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ミラージュの冒険日誌

2024-05-26 16:09:31.0 テーマ:その他

天使が大地を歩くなら(15)【なりきり冒険日誌※ver6.5までのストーリー記述あり】

 影の軍団が、光の円陣に殺到する。

「第二陣、前へ! これ以上の接近を許すな!」

 アーベルク団長が声を張り上げた。混成部隊も必死で守りを固める。私はにじり寄る影に剣を叩きつけた。闇が弾ける。その奥から、また影が湧き出す。
 魔神の化身が獄炎を吐き出した。咄嗟に盾を構える。その盾ごと私の身体が弾かれる。

「ミラージュ!」

 リルリラの叫びが近い。それが意味するのは、敵が円陣に迫りつつあるということだ。
 私は歯を食いしばり、悲鳴を上げる身体を強いて立ち上がらせた。地響きと共に影が前進する。光の円環に、魔神の手が伸びようとしていた。
 守護騎士が、魔法戦士が、懸命に道を阻む。その全てが魔人の暴威に弾かれる。天使が今一度、その力を行使する。魔神はそれすらも跳ね返し、なおも前進する。カンティスが苦悶の声を漏らした。
 だがそれでも、諦めるわけにはいかない。
 私は体にまとわりつく影の群れに動きを封じられながら、必死で剣を振るった。
 その視界の中に、サンの美しい横顔が映った。
 聖女は、瞬きもせず呪文を唱え続けた。
 魔神の存在を目の前に感じているはずだ。そのこめかみには汗が滲んでいた。
 だが、恐怖は無い。
 強固な意志を秘めた瞳が、百の言葉より雄弁に彼女の気持ちを物語っていた。
 決して怯まぬ。
 怯めば、疑ったことになる。恐怖から己を守護する存在を。その思いを。
 故に怯まぬ。
 それは信仰……否、信念。
 それに応えようとする男がいた。
 円環に魔の影が伸びる。
 そこに重なる、もう一つの影がある。

「ぐあぁぁぁぁぁ!!!」

 雄叫びと共に、ダンディオが突進した。なんと掴みかかる影の兵士を二体、いや三体も引きずりながら少しも速度を落とさずクエドの荒れ地を疾走する。
 純白の鎧は既に地と泥で汚れ、兜も壊れて見る影もない。温厚な騎士が獣じみた声を上げ、なりふり構わず地を蹴った。一心不乱に巨体を走らすその姿は、戦闘馬車すら連想させるものだった。

「があっ!!」

 重厚な両手剣の重みある一撃が、魔影と激しくぶつかりあい、轟音と共に闇を払った。
 そのまま身体ごと体当たりで押し付け、鎧の重量で無理やりに敵の前進を阻む。

『下郎、不遜なり!』

 魔神が剣を鷲掴みにし、吠えた。
 騎士は剣を手放すと、その両手に光を湛え、魔神の胸に押し付けた。ブラスターフィスト……その応用だ。
 衝撃音と共に光と闇が震える。闇が怒りに悶え、咆哮を上げた。夜空が歪む。それでもなお、騎士はひるまない。

「僕が、絶対に、君を守ります」  歯を食いしばり、闇を睨みつけ、静かに、力強く断言した。
 聖女の口元がほころぶ。
 魔神の影人形が怨嗟に蠢いた。

「援護せよ! 彼一人に任せるな!」

 アーベルク団長が檄を飛ばす。私は闇を振りほどき、地を蹴った。
 守護騎士団と魔法騎士団がダンディオ団長を支え、守備の陣を敷く。天使が肉弾をもって影を阻む。僧侶たちは祈りの印を組み、光陣をよりいっそう輝かせた。
 呪詛と苦悶の声が闇の中から響く。
 そして聖女の情熱を秘めた唇が、最後の詠唱を終えた。

「破邪の力よ、退魔の炎よ。かつえたる魂を闇の怨讐より解き放ち、光の中へと消し去り給え……ニフラム!!」
 影が、悲鳴を上げた。
 柔らかな光が宵闇をかき消す。
 鈴を鳴らすような、あるいは耳鳴りのような、不可思議な音が響いた。
 乳白色の霧が漂う様に、夜が色を変える。
 それが白々と薄れ、消えていった頃、魔神の咆哮も、影の軍団も、姿を消していた。
 再び夜の帳が空を覆い、沈黙が地を支配した。
 サンが瞳を閉じ、長く息をつく。
 戦の音は、もう聞こえなかった。

 *

 夜風が背びれを優しく撫でる。
 冷たい風は少々傷に障ったが、それでも心地よいものだ。
 戦いは終わった。破邪の光も影の軍勢も消え、残ったものは夜風と月の光だけ。
 星空の元、団長とサンの間に交わされたやりとりを、ここにこまごまと書き記すほど私は野暮ではない。

「ね、ミラージュ」

 と、私の背に柔らかな手が触れた。
 リルリラだ。

「サンちゃんって、いい子でしょ?」
「ああ」

 私は何の躊躇いもなく頷いた。

「本当に強い女性だ」

 抱擁を交わす二人を見つめ、私はそう言った。
 隣では守護騎士団のプリゼーラ嬢が肩を震わせ、嗚咽と共にその光景を見守っていた。

「な、泣いてません。わだし、泣いてまぜんから!」

 私の視線に気づくと、彼女はあわてて否定しながら鼻をすすった。

「こんな素晴らじい光景を見で、泣いでだらおがしいじゃないですか!」
 
 夜の海はやがてくる夜明けの気配を微かに宿し、静かに潮騒を奏でていた。
 無論、私も泣かなかった。
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