なりきり冒険日誌~チョッピ荒野にて
吹きすさぶ風にのって、雄叫びが響く。
続いて、爆音。
私も負けじと声を張り上げる。
ここはチョッピ荒野。打倒、災厄の王を目指す私は修業の場を求め、プクランドに広がる岩石砂漠を訪れていた。
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青空は、地平線に近づくにつれて砂塵の色に染まり、やがて大地と同化していく。
殺伐とした光景を彩るのは。きらきらと流れる砂にまぎれた貝の化石だ。
砂埃舞う荒野だが、おそらくかつては海が広がっていたのだろう。この貝がプクリポたちの食べ残しでなければ、の話だが。
今でこそ旅人たちで賑わう休息所だが、ここ至るまで、チョッピには何度かの興亡の歴史があったという。
荒野を寸断する巨大な長城も、その歴史を物語る建築物の一つである。
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この長城が何を目的として作られたものか、寡聞にして私は知らない。だが、この規模といい、堅固なつくりといい、ただの防砂堤とはとても思えない。
おそらくは敵の侵攻を防ぐために建てられたものだろう。
敵とは何か。魔物か、それとも……軍、だろうか。
温厚なプクリポたちの間に戦争があったとは思えないが、善人だけを100人集めても争いが起こるのが世の中だ。プクリポ同士が血で血を争う抗争の時代が、過去にはあったのかもしれない。
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……この顔を見ていると、やはりありえないような気もしてくる。
そもそもプクリポに血は流れているのか? 中には綿が入っているともっぱらの噂だが……
ともあれ、その長城もいまや半ば任を終えているらしく、旅人たちは門を通って自由に長城を出入りできる。
長城が役目を終え、この土地も見放されたのかと言えば、そうでもないらしく、歴史書はチョッピの集落を鉱山の村として語っている。
かつて栄えたアラモンド鉱山の姿を、今も長城のそばに見ることができる。ぬいぐるみのようなプクリポと鉱山の取り合わせはどことなくファンキーで、笑いを誘う。
だがその鉱山も今は閉鎖され、今や小さな休息所が残るのみだ。
またも見放されかけた集落はしかし、誰もが想像しえなかった方法でさらなる飛躍を遂げる。
飛躍の立役者は何を隠そう、この魔物である。
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バザックス。
その巨大な甲羅は加工すれば武具にも建築材にもなり、厚い皮は絨毯から防寒具まで幅広く使われる。
だが何よりも需要が高いのは、冒険者の修業相手としてである。
戦士たちの雄叫びが、魔法使いの放つ爆音が、長城を超えて休息所まで届いてくる。
恐竜狩りのメッカとして、チョッピ荒野は三度繁栄を勝ち取ったのである。
私もまた、その光景の一部である。
ノーブルコートを壁にかけ、一介の戦士として恐竜を追い回す。
フォースの力を身近に感じられないのは寂しいが、それで困ることが特にないというのが余計に寂しいところだ。
恐竜たちにもまれながら、目指すは刃砕きの習得。
甲殻に剣を阻まれながら、少しずつ手ごたえを得始めた頃、一通の手紙が休息所に届いた。
手紙に刻まれたのは、見慣れたZのイニシャル。陸亀のマーク。
どうやら再び決戦の時が訪れたらしい。