釣り。それは己との対話。
釣り。それは母なる海への挑戦。
釣り。それはフィッシング。
果てなき釣り坂を、登り始めた男がまたひとり…。
「えー、でっかい伊勢エビですか?」
「そうなの!旬って言ってね、毎年この時期には
ミューズ海岸で、すっごくおっきい伊勢エビが釣れるの!
中でもおっきな伊勢エビを釣ったひとには賞品も出るのよ!」
「賞品すか!そりゃいいっすね!オレもちょっくら
釣ってきます!」
「あはは、釣りってそんな簡単じゃないわよ。
文字通り、命懸けなんだから。
でも、せっかく釣りに興味を持ってくれた人を
あんまり脅してもだめよね。
道具は貸すから、いっちょうけんめい、頑張ってきて。」
「いっちょうけんめいってなんすか(笑)。
一生懸命でしょ(笑)。」
~ミューズ海岸~
「ナツリさんはああ言ってたけど、これ大したことないな
手元のメーターに魚の距離と食いつき度が表示されてるし、エビが
どんなに暴れても食いつき度が8以上減らされることはない。。
つまり、食いつき度が8以下にならないように気をつけて
20m以内にエビを引き寄せたら…
全力で引く!!!!」
「と、ほら、この通り。なんてことはない。
理論的にやれば簡単だよ、こんなの。」
「…っと、言ってる間にまたかかったな!
…お、なかなか暴れるじゃん。でも竿をゆるめて…
うっ、離れやがった。でもまだだ!何度でも引いてやる!
きた、20m!!
おら!全力引きだ!!!
…っ!?19mしか引けなかった!?
や、やばい、食いつき度が2しか…やられる!!」
魚は疲れているようだ。
「…!た、助かった!止めの引き!!」
伊勢エビを釣り上げた!!
「…いま、オレは一歩間違えれば海にひきずりこまれて
伊勢エビのディナーになるところだった。
命懸け…だった。」
(ナツリの声)「いっちょうけんめい、頑張ってきて。」
「そうだ、一釣懸命。オレと魚、命と命がぶつかり合う、釣りは命懸けの勝負なんだ。」
「はは、奥が深いや…。」
釣り。それは己との対話。
釣り。それは母なる海への挑戦。
釣り。それは命と命の真剣勝負。
いま、少年の目の前にそびえるのは、果てなく遠い、釣り坂…。
「ええ、伊勢エビ1匹で大トロ1枚しか食べられないんですか!?」