思い出、8
一ノ瀬峰子はサナ大学構内のロビーで待ち合わせしていた。
きょう会うつもりの客は、若い優秀な物理学科の女子大生のはずだった。しかし時間になってもそれらしき女性は来ない。
峰子「エレオノーラさんはどうしたのかな?」
そわそわしながら、こちらをチラチラ見ている小さな女の子・・・・8歳くらいだろうか? がなんとなく気になった。
女の子はおずおすと、峰子のところに来ると、「あの・・・・私 エレオノーラです」と言った。
峰子は飛び上がった。
「えええええ!!」
エレ「あの亜空間コンピュータに関する質問を答えていただいてありがとうございます。あと、ミネコ・スィオリーの中心部分の計算式がよくわからなかったんですけど、教えていただけますか?」
峰子「もちろんです。あなたのお姉ちゃんとかじゃないのね?貴女自身が質問者なんですね?」
エレ「はい・・・・そうです」
峰子はエレオノーラに最高の笑顔で話しかけた「良かったら私、今日はもうお仕事が終わりなので我が家にエレオノーラさんに来ていただいて、ゆっくりお話ししようと思ってたんだけど、来ていただけるかな?」
エレ「わぁい、うれしいな。よろこんで」
峰子「でも保護者の方の許可をいただかないと 貴女のお返事だけで来てもらえないですね」
エレ「あの、おじいさまは今お仕事でおいそがしいので、ボディガードでもいいかな?」
峰子「?」
エレオノーラがパンパンと手をたたくと女子レスラーの様なでかい女性が2人現れた。
でかい女性「お嬢様のボディガードのリンダとアンナです。一ノ瀬峰子さんの家を訪問されるのはヨハネス氏が許可していらっしゃいます。私どもも、どこでもご同行し命に代えてもお嬢様をお守りします」
峰子「そ そうですか・・・・・」
峰子「では 夫がじき迎えにきてくれますので・・・あ!来ました!あの車です。アルベルト!ここよ!」
峰子の夫のアルベルトが乗ってきたのは、ボロい内燃機関の自動車だった。
エレオノーラよりもっと小さな女の子が乗っていた。
アルベルト「娘の渚だよ」
女子ボディガード2人は顔を見合わせた・・・(ボロぃ・・・・ロボット電気スーパーカーが普通の時代に・・・)
時代遅れのボロい内燃機関の自動車は ガタピシ音を出しながら、峰子アルベルト夫妻の家に着いた。
後ろを女子ボディガード2人を乗せたロボット電気スーパーカーが続いた。
家につくと二人の女子ボディガードはそのまま エレオノーラに挨拶して帰っていった。
エレ「ボディガードは帰しました。」
アルベルトが言った「ようこそ わが家へ」
峰子がエレオノーラの手を取って家に招き入れた。
テーブルにはお茶の用意がしてあって、アルベルトの手焼きのクッキーやケーキが置かれていた。
「わーい」
エレオノーラは心行くまでケーキをほおばりながら峰子に難しい物理学の質問をした。
峰子はソファで眠ってしまった渚にそっと毛布をかけた。
それを見てエレオノーラは
「・・・・・私も渚ちゃんになりたいな」
峰子「いいよ。良かったら今だけでも 私たちの娘になる?」
エレ「わーい、でも今だけですか?」
二人はエレオノーラの言葉に顔を見合わせた。
アルベルト「いいよ、いつまでも 心だけでも私たちの娘にしてあげるよ」
エレオノーラはポトンと涙を落した。
峰子「ど どうかしたの? ごめんね?」
エレ「うれしくて・・・」
峰子「私には貴女と同い年の息子がいるの」
エレ「どこにいるんですか?」
峰子「東(ひのもと)国の私の実家よ」
「峰子の実家は大笠原諸島の小姑島で すごく環境がいいんでね」とアルベルト
エレ「一緒には暮らしていらっしゃらないんですか?」
アルベルト「そうだね 実家でみんなで一緒に暮らそうか?」
峰子「仕事をすべて断って1年位そうしましょうか・・・・エレちゃんもいっしょに」
エレ「ホントですか?ものすごくうれしいけど・・・・」
峰子「じゃあ、そうしましょう」
3人は話し合い、2年後に1年間 小姑島の峰子の実家にホームスティすることになった。