エレオノーラと緑の横に重厚な電気リムジンがすっと止まった。
開いた扉にエレオノーラに手をひかれるように緑も乗り込んだ。
凶霞市市民空港は名物のガスがでて視界が悪かった。凶霞市市民空港にすら存在するアレクサンドロス家専用プライベートエリアのタラップの下に横付けになった重厚な電気リムジンから、エレオノーラと、その華奢な手で手を組まれた緑が引っ張られるようにタラップから自家用超音速垂直離着陸ジェット機に乗り込む。
自家用機機長とボディガードは空気を読んでエレオノーラに一礼しただけでそのまま発進態勢にはいった。
エレオノーラはちゃっちゃと緑を座席に座らせると、緑と自分のシートベルトを数秒でしめた。
垂直に上昇した機体は適当な高度に達するとそのまま超音速飛行に入った。
自家用機は来た時と同じように数時間でリケトニア公国の上空に達した。
空港からはまた重厚な電気リムジンに緑は引っ張り込まれ、すぐ横のアレクサンドロス・コンツェルン本社ビルの専用地下駐車場から専用エレベータで最上階のエレオノーラの自宅へと手を引っ張られて向かった。
エレオノーラの自宅の彼女の部屋で緑とエレオノーラはようやく抱き合い
エレオノーラが緑の柔道とアスレティックで鍛え上げられた細マッチョの身体にEカップの豊満なおっぱいを押し付け、首筋に濃厚なキスをしてきたとき、エレオノーラの左手のブレスレットについている緊急コールが点滅しているのを緑は横目にみて気が付いた。
緑「おい、お前のドクターコールが点滅してるぞ。」
エレ「気が付いてるわ。」
エレオノーラは緑にキスしながら空いている左手でエアマシンで小さなコマンドをだすと、エレオノーラNPCに切り替えようとしたのを緑が右手で止めた。
緑「緊急ドクターコールなんだろ?ロボットまかせにせずにお前が対応しろよ」
エレ「あれは私のコピー人格を持つ異空間スーパーコンピュータ・メグの端末だからあれで十分よ。」
緑「気持ちの問題だろ? お前、医者として呼ばれてるのに、それをいつもNPCに丸投げしてんのかよ?おい?冗談だろ!」
エレ「うるさいなあ・・・NPCの性能は私とほぼ同じだわ!」
緑「さっさとコールに出ろよ! お前 医者でもあるんだろ?!」
エレ「・・・・・・!」
エレオノーラのキスを振り払い、怒り出した緑に根負けし
エレオノーラがブレスットのコールに出た。
アレクサンドロス世界財団のメディカルクリニックセンターのチーフドクターの一人からの呼び出しだった。
エレ「何がありましたか?」
ドクター「東(ひのもと)国でPS水溶液を飲んだ人間が2名出たようです。現場の医師に指示をおねがいします。」
エレ「わかりました。」
エレ「フィロソファーズストーン(賢者の石)水溶液を飲んだ馬鹿がでたらしいわ。
やれやれ、あんな毒物飲むなんて、とんでもない想像を絶することするバカがいるもんだわ。」
緑「あれって毒物なのかよ?」
エレ「そうよ。医師としての最高度な取り扱い技術を必要とする毒物よ。
エレ「死者蘇生もできれば人を見かけ若返らせることもできるけど、使い方をミスれば投与された人をとんでもない化け物にしてしまいかねないモロバの剣よ」
緑「お前が発明したんだろ?」
エレ「理論的に予測したのはあなたのママよ!
エレ「無料でPS水溶液は希望する医療機関に配布してるけれど、その限りは安全に使えるようにする責任も伴う。アレクサンドロス財団が全費用をだして保管庫もこっちで現場につくってるのよ」
エレオノーラはカウチに座るとエアマシンで小さなコマンドを出した。
空中に四角いコマンドが出て現地の医師の顔が映った。
医師「エレオノーラさん、いま患者二人の映像を送ります。こちらで対応できるかどうかの指示をまずお願いします。」
エレ「緑、あなたはこれから出る映像を見えないように設定しとこうか?」
緑「見ていいなら、見る。」
エレ「ほんとはいけないけど、まあいいわ。」
医師の顔から切り替わって、そこにはこの世の物とも思えない、人間であったと思えない醜悪な大きな化け物が2体映って病院のベッドの上に横たわっていた。
緑はぎょっとなり、ドン引きして2メートルはあとずさりしたが、エレオノーラは平然としていた。