地獄谷学園は中高一貫校で全寮制の学校である。創立60年の伝統ある私学である。
スポーツ名門校であり、いろんなクラブにそれぞれに専属の広いグラウンドと設備を誇る。女子部と男子部はそれぞれ独立していて、学校のイベントやクラブ活動の時しか男女一緒にはならない。創設者は東野駄衛門という東(ひのもと)国で有名な天才画家で彫刻家でもある人物だ。東(ひのもと)国屈指の大富豪で年齢は90歳。若いころと変わらぬ旺盛な制作活動を続けている万年青春の老人だ。彼は30歳のとき地獄谷学園を創設した。
これまで大勢の女性と何度も結婚し離婚し過去に分かれた妻の数だけで14人、あまつさえ大勢の愛人を持ち、15人目の妻は結婚した時16歳であった。エロ爺として名高いが、しかし子供にはめぐまれず息子が一人いるだけである。東野順平である。彼は息子にはまったく無関心であり、つぎからつぎへと若い女性を求める『求エロ者』である。
地獄谷学園は東帝都内ではあるがなんと大笠原諸島の小姑島にある。
東野駄衛門は島の北側のすべての広大な土地を所有しそれを学園用地にあてている。
小姑島の北側は古来から地獄谷とよばれていた岩だらけの荒れ地が続くかなり広い台地や山地であった。
もともと東野駄衛門は大笠原諸島を治めた領主の子孫である。もと貴族であり子爵の館のもとの持ち主であった。
全寮制だが島の小姑町に自宅のある生徒は自宅通学を特別に認められている。
地獄谷学園在学中に、一ノ瀬緑は知らなかったが、東野順平は、なんと緑の妹の渚とつきあっていた。
渚は兄が妹に初めて会ったとき外人の女の子に間違えたくらいソース顔の美女である。身長168センチでおっぱいはそんなにでかくないけどスタイルは抜群、根性のある柔道ガールである。スポーツは万能タイプ。
今は一ノ瀬緑の妹の一ノ瀬渚も世界警察機構の特捜官のライセンスを持っている。渚の勤務先もリパ市の兄と同じ世界警察機構本部ビルであった。
本部ビルの程遠くない所に、渚はリパ市の下町にある古い住居の屋根裏部屋を借りていた。
そこにで一ノ瀬渚は東野順平と暮らしていた。同棲である
東野順平は無職でまったく家事も手伝わないぐーたら男であまつさえ、渚のお金を持ち出して娼婦を買いケンカの種になっていた。
世界警察機構の国際捜査官つまり特捜官は一つの権限を持っている。
特捜官助手を任命する権限である。昔のメリ合州国の西部開拓時代の保安官助手の制度と同じで、助手の給料は自分のポケットマネーでその全責任も特捜官 自身がおう。
渚は順平を自分の特捜官助手として上司に申請していた。
そのために緑は会いたくもない東野順平と仕事場の世界警察機構本部ビルでも、家族のあつまりでも、顔を合わさなければならなくなり、うんざりしていた。
一ノ瀬緑は
プールにぷかぷか浮かぶのが飽きると、エレオノーラのアスレティックルームへ行く。そこには世界の最新鋭の筋力トレーニング器具の最高級品がそろっていた。
そこで果てしなく筋力トレーニングをした。
そのとき一ノ瀬緑は
小姑島で祖父に課された『地獄の特訓』の日々を思い出した。
ーーーー岬のさらに先端にあるほこらの、おのころ神社までつづく階段をうさぎ跳びで千段と他いろいろーーーー最後は砂浜の波打ち際で渚との乱取りだったなあ。中高生時代にーーー毎日夜明け前からだったなぁ。
『地獄の特訓』は緑は必修で渚は任意だった。
祖父は毎日、緑には
「ほら、死んででもやりぬきやがれ!」と怒鳴るが、渚には「辛かったらいつリタイアしてもいいんだよっ。」と優しく言う。
しかし渚は絶対リタイアしなかった。緑の地獄の特訓には、すべての日々を毎日、渚が後ろについてきた。兄妹の柔道一直線であった。
もしエレオノーラが帰ってくれば、いくら集中していても、あっけなく追い出されるのだが・・・・エレオノーラも日課の筋力トレーニングとヨガをハードに毎日欠かさずやっている。でも緑には見せない。
「二人でやらしてくれよ!」
という彼の発言は無視され、部屋を追い出される。
エレオノーラは返ってくると、筋トレルームにやってきて
「これからここは女子更衣室になりまーす」と言う。
緑は出ざるを得ない。
彼がでると彼女はガチャン!と内側から鍵をかける。