夕食の分厚いフィレ肉のビーフステーキを5枚食べた後、メロン丸3個食べ、チョコレートのたっぷりかかったアイスクリームを銀のバケツに一杯食べて
「げっぷ」
僕は調子に乗った。
田中太郎は、女王に自分の武勇伝をえんえんと語った。
女王は微笑みながら、ときどきあいづちをはさみながら彼の話を聞いてくれた。
「ほんとうに、おつかれさま。この世界を守ってくれてありがとう」女王は笑顔で田中太郎の目をじっと見つめてそう言った。
腹黒田高校1年生の田中太郎は女王と打ち解けた気分になった。
少し、自信が出て来た。
「お疲れでしょう。数日、少し休まれてはいかがですか。よろしかったら銀の都市をご案内しましょう」
「そだね」僕はこの異世界の街も見学してみたかった。
「じゃあ、すぐ行こう」
「食後のお休みはいいんですの?」
「うん、今すぐ行きたい」
「では、出かけましょう」
お城の大きな銀の門が重々しく開いた。
女王と僕が街にでると、後ろに20人ほどの兵隊がうやうやしく付き従った。
「?!」
「行きましょう」
お城の前は広い広場で真ん中に大きな銀の彫像がたくさん並んだ噴水がある。
僕「きれいな噴水だね」
女王「これは噴水ではなく泉なんですよ。とても清らかな清水が沢山湧くんです」
僕「へえ。ちょっと飲んでもみてもいい?」
女王「どうぞ」
うしろの兵隊がさっと銀の盃をぼくに差しだした。
僕はその盃で泉の水を汲んでぐっと飲んだ。
ほのかに甘い清水だった。
「ぷはっ」
僕らの周りに人だかりができたが、女王が「ではいきましょう」と言った。
街の泉の噴水のある広場から十字に東西南北に大きな通りが伸びている。そこには服をきた人間みたいにしゃべる動物たちの市民も大勢歩いている。街の店先には山盛りの果物や見たこともない野菜や、色とりどりのガラス瓶、金銀宝石、魔法の道具や薬売りの店や武器屋らしき店もあった。とても豊かで賑やかな街で人々の表情はとても明るかった。街の辻には流しの楽士がバイオリンを弾きながら帽子を前に出している。道化師のいる旅芸人一座らしき人々が広場の隅で寸劇を披露している。紙芝居をしながらアコーデオンを弾き語りしている人達もいる。鳩に似ているが、ちょっと違う見たこともない青い小鳥たちが街の中を鳩みたいに餌をついばんでは飛んでいく。
店の人も人間あり、服を着た動物あり。しばらく歩くと、たくさんの大きな店小さな店のある商店街がずっとつづいたあとは、銀の高い城壁がぐるっと街を取り囲んでいるのが見えた。
僕「城壁に上がりたいな」
女王「いいですよ」
城壁に登ると、柔らかな風が吹いていた。
外を見下ろすと、どこまでもどこまでも森が続いている。
青いペガサスに乗って飛び越えた森は実際には物すごく果てしなく広かった。
遥かな森の向こうにキラリキラリと湖が光っている。
夕日が湖に沈んでいく。
なんだかどっと疲れが出て、僕はそのまま、ふらっと倒れて、寝転がった。
天には星が見え始めていた。
「このまま寝てもいい?」
女王が笑いながら、「仕方ない方ですね、お城まで歩けませんか?」
「うん」
「ではどうぞ、お休みください」
女王の返事を待たず、僕はもうぐーぐーといびきをかいていた。