銀の城の女王の間で田中太郎と青き女王アルテミシアと4人の魔女が集まっていた。
そこには僕が初めて会う黄の魔女がいた。とても小柄でチョコチョコしてるおばさんで、黄色のローブと黄色のつば広帽を被り、つぶらな瞳に可愛い笑顔のちょっと天然みたいな不思議ちゃんな感じのおばさんだった。
子犬は野生の狼の子供とは思えないほど人懐こく、誰にでもしっぽを振る愛想のいい性格だった。
僕が銀の器に入れて、あげたミルクをおいしそうにピチャピチャ飲んでいた。
ただ、ものすごくよく飲む。これで器に12杯目だった。
飲み干すと、もっとくれと「きゅんきゅん」鼻を鳴らした。
仕方なく、僕は14杯目のミルクをあげた。
子犬は「きゅん」というとまた美味しそうに飲み始めた。
飲み終えると、ふかふかの毛布と籐籠で女王が作ってくれたワンちゃん用のベッドにもぐりこみ、すーすーとそのまま眠ってしまった。
白い魔女が言った。「これは魔法獣ファイガに間違いないですね」
「ですね」「ですね」「ですね」
4人の魔女たちは同意した。
僕「魔法獣ファイガって何ですか?」
白い魔女「私も3度しか見たことがないけれど、500年に一度あらわれて、子犬を産んで、狼の群れに托卵する不思議な獣ですよ」
赤い魔女「この世界の野生の獣の中で断トツの最強の獣ですね」
緑の魔女「本来、人間には無関心で、こんなに人懐こい魔法獣はどんな記録にも無いですね」
黄の魔女「魔法獣の子供は狼の子供にそっくりで、子供のころは強さも狼の子犬と大差ない。自分で育てずに自分の子犬を狼の群れに紛れ込ませて、狼に育てさせるという変わった性質を持ってる不思議なこの世界で最強の獣なんですよ。本来、人間には無関心で、人になじまない不思議な獣なのです」
そろそろ僕は銀の城で過ごすのにも慣れてきた。
銀の城にはたくさんの兵隊や召使が住んでいる。
みんな僕に出会うと、うやうやしく一礼する。
朝起きると、すぐに3人の若い男の召使が僕の身体をぬるま湯で拭き、歯を磨いてくれて、僕に貴族の男子の服を着せる。髪をといて香水かけられて靴下と靴を履かされて大食堂で食事。
いつも違うメニューの手の込んだ朝食をたらふく食べて、食後は銀の城の外の池の畔の木漏れ日の花園で女王の膝に頭を乗せて、女王がオレンジを一袋ずつ皮をむいて僕に食べさせてくれる。飽きると葡萄。
それは全部そこの周囲の王家の果樹園にたわわに実っている果物だ。
周りには銀の都の住人もかなりいて自由に果物をもいで食べながら談笑している光景が普通だ。
木漏れ日の花園にはいつも誰もいないけど。(ひょっとしてここ王家の聖地?のせいかも)
僕はこれまでの人生でこんな幸せ味わったことはない。今、最高に幸せだった。