「な、なんだよ」か細い声で強盗は聞いた。「早く言え」
「このトランプを使いましょう」どこからともなくアナライズはトランプを取り出した。「ポーカーをして、私が勝ったらあなたの発言はなかったことにしてあげるわ」
「俺が勝ったらどうするんだよ」
「めろんぱんに向けた拳銃の引き金を引きなさい」
「えええ。ちょっとアナさん?」
「あなたがディーラー兼立会人をしなさい」アナライズはトランプをめろんぱんに渡した。「いい? あなたの命運がかかってるのよ。私にバレなきゃイカサマでも何でもしていいわ」
「無責任な! でもするしかないのか…」
めろんぱんはトランプの中身を取り出して、アナライズと強盗に5枚ずつ配った。
「2枚チェンジだ」強盗は2枚交換した。「よし、これは負けるぞ」
「私は5枚チェンジするわ」
アナライズはロイヤルストレートフラッシュが出来ている手札をすべて捨て、交換した。
「ちょっとお! アナさん何してるんですか! せっかく僕が…」
「せっかく僕がって何? あなたもしかして自分が助かろうとイカサマをしたってこと?」
「てめーそんな器用なマネが出来たのか! いやそうじゃあねぇ、今一番問題なのは勝てる手札を捨てたこの店員が一番やべぇ!」
「黙りなさい。まだ勝負は決まってないわよ」アナライズは手札を場に出した。「ほら、4のワンペアよ」
「え、ちょっと待って。これはドローだろ」
強盗は上目遣いで恐る恐るワンペアが出来た手札を出した。
「あんたねぇ、ポーカーしたことないの? こういう場合はハイカードって言って役の強さで決まるのよ。あなたは9のワンペアだからあなたの勝ちよ。さあ早く引き金を引きなさい」
「アナさん? え、嘘。いやだ! 死にたくない!」
「ちょっと整理させてくれ、俺は今から引き金を引くってことになるんだよな? それでその…え、金は?」
「お金の約束なんかしてないわよ。引き金を引くかどうかの賭けでしょ。あなた勝ったんだからさっさとめろんぱんを撃ちなさいよね」
「勘弁してくれよ。撃ちたくねーよ!」
「僕だって撃たれたくないですよ!」
「ギャンブルをするってことは、それなりの覚悟が出来てないとダメよ。覚悟がないなら受けちゃダメ。分かるよね?」
場が一瞬凍り付いた。
「まぁまぁいいじゃないですか。この強盗さんにはその覚悟がなかったっていうことですよ。わたしは面白かったので満足です」
わたしはゆっくりと立ち上がって言った。
「そうだよな、ありがてぇ、誰だか知らねぇが感謝するよ」
強盗は足早に退散した。
「えっ、誰?」
めろんぱんは不思議そうな顔をして言った。
「あー、この物語の書き手さんよ。三人称だと思った? 一人称だったのよ」
「何ですかこのオチ!」
「まったく最後までめんどうな人ね。じゃあどんなオチにしましょうか」
アナライズは腕を組んだ。
「これなんてどうです?」
わたしは強盗が置いて行った拳銃をアナライズに渡した。アナライズは躊躇せずにめろんぱんの心臓を撃ち抜いた。