11 無法者の挽歌④
ここで見限られたら殺される――そう思ったゴーリキが、必死でゼーエンに売り込みを始める。
「ま、ま、待ってくだせえ! さっきはセバスさんの連れてた激マブな女にのぼせて調子に乗っちまいましたが、闘士の情報でしたらそれなりに把握してますし、ご命令とあらばパシリでも何でもやらせていただきますぜ!」
「ほう……その言葉、嘘はないと誓えるか?」
ゼーエンの反応に手応えを感じたゴーリキが、ここぞとばかりに猛アピールを続ける。床で手を合わせて土下座をしながら、
「勿論でさぁ! ゼーエンの旦那のためなら例え火の中水の中、機甲戦団の幹部の方のお力になれるんでしたら、そりゃもう喜んで!」
しばらく無言の時が続くも、やがてゼーエンが土下座のゴーリキに歩み寄り、見下ろしながら声をかける。特筆すべき点も見当たらないが、まあそれなりに使ってやるか……ゼーエンの表情には、そのような色がありありと浮かんでいた。
「……ふん、いいだろう。この〈碧刃のゼーエン〉の手下として働けることを光栄に思うんだな」
平伏しきりのゴーリキを尻目に、ゼーエンが右手の指を虎爪の型にして力を込める――その指先には僅かながら、紺碧の闘気が鋭い輝きを宿していた。
「――いや、実にお強い。私もついセバス殿の戦いに見入ってしまいましたよ」
エリミリアの払い戻し金を預けて程なく、魔法戦士レゼールと合流したセバス。ゴーリキとの試合中に到着したため、図らずも相手はすぐにこちらを見つけることができた。
一見、魔法戦士風に見える彼の変装スタイルだが――こちらも全身を黒に統一しており、深くかぶったハットは貴族的だがよりシャープなデザイン、マントも魔法戦士団のものよりファントムな雰囲気を漂わせている。黒衣の剣士を加えた黒ずくめの三人――エリミリアは露出した白い肌も目立ってはいるが、一同は再び酒場へと集まっていた。
「やはりゴーリキは機甲戦団を騙るだけの小物でしたか……当てにはしていなかったものの、少しでも情報を得られればというのが本音ですね」
夕食の頃合いということもあり、三人は酒場の名物とされているローストビーフを注文。香味野菜と果物のソースを添えたジューシーな味わいに舌鼓を打ちながら、レゼールが杯を置いて一息つく。続けてセバスの目を見ながら、
「所詮は偽戦団員、かつての本物には遠く及ばないのも当然……流石は元戦団幹部、蒼翼のセバス殿といったところですかな」
「……やはり、ご存じでしたか。ヴェリナード城でお会いした時から、そのような気はしていました。隠しておくつもりはなかったのですが」
頭を下げるセバスに、レゼールが慌ててかぶりを振ってみせる。
「いや、そのようなつもりでは。私がその頃から戦団を追っていたことを分かっていただくには一番早いかと思いましたもので、こちらこそ失礼を」
こちらも頭を下げるレゼール。そんな両者を眺めながら、大勝で気分よく杯を空けているエリミリア――今回の席は全て彼女の奢りなのだが、笑いながらウェディ二人へ、
「ちょっとぉ〜、二人とも頭下げてたら話が進まないじゃない? お互い戦団の情報が必要なんだし、さっさと持ってる手札出していきましょ」
〜11 無法者の挽歌⑤へ続く〜